バンクーバーでは、面白い光景を体験した。下町の雰囲気がある通りを歩いた時である。数人の男達が並んで座っていた。
 最初の男は、無視して通り過ぎた俺にAnn! happy? (お前だけハッピーかよ!)とどなった。金を出さない相手に文句を言うのは外国では結構当たり前のようだ。
 日本人はそんなに自己主張しない、というより出来ない。苦笑しながら数歩歩くと、もっとふざけた若い男がいた。
 彼はキャンプ用の椅子に腰掛けて大きな日傘の下で、釣り糸をぶら下げている。竿の先から垂れた糸には小さな測り皿があった。
 彼はヘッドホーンで音楽を聴きながら、通りかがりの俺に釣り糸を差し出して、その皿に小銭を入れろよ、みたいな態度を示した。
 日光浴をしながら小銭を稼ぐ方法を思いついたようだ。彼は自分の発案にとても満足してご満悦である。
 彼の横に座って記念写真を撮ればよかった、と思った。いやいや俺も日本人の代表者として、何かアイデアを出して座るべきだと後悔しました。