運転免許を更新するために後期高齢者の認知症検査を受けさせられた。
申込みをしたら、認知症の検査の対象者が多く、一ヶ月後の日程です、と担当者から言われた。その日程は誕生日より数日後だった。
仕方なくOKした。しかし、何故か警察から電話があり、優しい女性の声で「運転免許の更新はお済みですか?」
うむ?もしや今流行の振込め詐欺か。俺に若い婦人警官が指名で携帯に電話するはずはない。などと考えていたら、女性はさらに優しい声になった。
間違いないぞ。と思っていたら、本当に婦人警官で、更新が誕生日までにされていなかったので認知症を疑っていた。誕生日も忘れたお年寄りだとチェックのために連絡してきたのだ。明日の検査で分かりますよ。

当日は検査会場に高齢者が集まっていた。係の担当者が3人もいて、部屋に入ると前に表示された名前の順に座るように指示された。

一人のジイさんが前の人に、あんたの席は違うよ、と文句を言った。すかさず係の人が、間違えているのはあなたですよ、と教えた。
ダダ大丈夫か、後期高齢者。検査の前にボケを披露してどうする。

係のジイさんも後期高齢者だ。彼は受講者に「これから認知症検査のために、絵を見せます。練習ですがしっかり覚えてください」と言った。
四つの絵があり、にわとり、大砲、車、ラジオが映像に映し出される。
係のジイさんは、そのイラスト映像を消すと、「はい大きな声でもう一度言ってみてください」。ケッ馬鹿らしい。小学生じゃないぞ。
えっ、みんな復唱してる?
「では、次の絵4枚も大きな声で」。えっ、またみんな復唱してる?大丈夫か。小学生みたいに復唱して、恥ずかしくないのか。俺は絶対にしないぞ。
「ハイ、本試験です。今のみなさんが復唱した絵を覚えている限り書いてみてください。」
えっ、それでみんな一生懸命してたんだ。
そんなこと俺は知らなかったぞ。知ってる人達ということは、何度も落ちてたの?
いやはや、傾聴は大切ですよ。今更、聞いていなかった、なんて言えば認知症扱いになる。何とか覚えている絵をひらがなで書きました。むっ?漢字をかけないのも認知症の検査対象になるのか。いやはや、パニックです。

次は視力検査です。隣の部屋に数人入って検査します。とのこと。
後ろの席のオバちゃんが入ってしばらくして出てきたが、検査が終わっていない。係のジイさんが、ハイ、まだですよと優しく声掛けした。この声だよ。婦人警官が俺をボケ爺さん扱いにした優しい声掛け。
大丈夫か後期高齢者。介護施設じゃねーぞ。

さて、無事に合格。三崎の警察に更新をしにいった。しかし、左目の視野が狭くて、やり直し。今回で終わりかと思ったが無事パス。
意気揚々と三浦半島の海岸沿いを運転して、帰ることにした。右カーブを曲がれば三浦海岸である。信号機の位置を確認していたら、バカーン、と衝撃が走った。
アッ、やっちまった。とっさにゴルフ場に練習に行けなくなる、という思いが頭をよぎった。
もう運転免許は返上するしかないな。左側に止まっていた運搬トラックの角に接触した。
相手の人に怪我はないし、俺も何ともないが、左に駐車していた車が視野に入ってこなかった。いや見えなかった。
名誉のために言っておくけど、認知症ではないぞ。
2022年8月31日。午後15時20分。運転を諦めるかぁ。