福岡の市民センターの前の公園では、週末にジョギングする人たちがいる。眺めていると麦わら帽子で顔を日焼けしないように大きなマスクで覆った女性が勢い良く早歩きをしている。その後ろにはジョギングをしている中年の男性が走っていた。女性を追い越しそうだか、なかなか追い越せない。

しばらくするとその女性が急に方向を変えて大きな木を横切った。すると男性もガクッと角度を変えて同じ方向に走っていった。

そうか。夫婦だったのか。だから追い越さなかったのか。しかし、俺だったら勝手にジョギングして自分の好きなスピードで好きな方向に走るけどな。

夫の前を大きく手を振りながら早歩きする女性の顔を見たいと思い後をつけたが、くるりと俺の方にやって来た。顔は銀行強盗のように黒い覆面タオルで見えなかった。

しばらく眺めていると女性は時たま彼女の気分で角度をカクッと変えて予測できない方向に速歩きするのだ。
その度に白髪混じりの男性はカクッと同じ方向に向きを変えてついていく。まあ、優しい男なのか奥さんの尻に轢かれっぱなしのだらしない奴なのか。とせせら笑っていると、段々とジョギングの走り方に力がなくなり、トボトボな感じになってきた。ついにはヨタヨタとした足取りになったが、銀行強盗覆面と麦わら帽子という奇妙な出立オバサンはますます元気になり大手を振って公園の中を速歩きするのだった。

ゲシュタルトの理論の一つに鵜呑み(Introjection)というのがある。人の価値観を飲み込んでしまったことを指す。親の価値観に従う人、職場の雰囲気を鵜呑みしている人、宗教や世間の価値観をそのまま鵜呑みにしている人達は、いつも誰かの顔色をうかがいながら生きていく。

この男性のように争いをしない、温和な人は、自分のエネルギーを発揮することがないから段々と力尽きていく。人生も同じだ。嫌われる奴は力強い。勝手に自分の価値観で動き回るからだ。そうですあなたですよ。オバサン。あなたですよ😝