人はあまりにも突飛なことが自分に降りかかると、えっ、エッ、と反応するものである。

朝早くコンビニに入って、おにぎりを2つ買った。フェリーの中で腹ごしらえのおにぎりである。
横の買物かごに入れたら、えっ、エッ、と言う気配がしたので、顔を見たら見知らぬおばさんだった。
アッ、失礼しました、と言ったが彼女は予想外の動作に驚いた。
声も出ないほどで、私の方を見ながら、えっ、エッ、と言う表情をしたが、身体が別の動物のように、お尻を左右にアヒルの様に振りながら後ずさりしたのだ。
その動作の面白さに目を奪われたほどだ。どんな名役者でもあの様な身体表現は出来ないだろう。
店を出る時に、やっと彼女も普通になって、すみませんでしたね、勘違いしました、と言ったらゲラゲラ笑いながら出ていった。きっと彼女自身も自分がびっくりしたあまり、声は出ないがお尻がビックリして、アヒルの様にふりふりした動作に笑いがこみ上げたようだ。

突然、私の顔に霧がかかった。えっ、エッ、と顔を上げたら、爺さんがコロナ消毒液を俺に吹きかけていたのだ。
その爺さんも俺の顔を見て、エッ、えっ、という顔をした。自分がマックの店で、消毒液を手に掛けようとして握った途端に、握りしめてしまい、座っていた私の顔に吹きかけたことが理解できた。その途端に、謝る前に、フッフッ、と笑いだしたのだ。
顔にコロナの消毒液をかけられて、えっ、エッ、としている顔が面白かったのだろう。
ジジイは、フッフッと言いながら店を出ていったが、予想外の出来事に、突飛な顔をしていた私は言葉が出ずに、彼を呆然と見送っていた。
に、二度目だぞ、マックでコロナ菌扱いされて、顔に消毒液を吹きかけられたのは。と怒りが湧いたのは、ビックマックを食べ終えたあとであった。