新刊「本当の自分に〈気づく〉心理学: 超個人的アイデンティティ」にいただいたレビューを紹介します。

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著者自身や交流を持つ海外のセラピストたちの経験、長年にわたる臨床事例、そして哲学や心理学の知見をもとに考察を重ねながら示された一つの見解に、深い感動を覚えました。
それは、「霊性や神秘的体験は、私たちヒト科の動物である有機体が、進化のプロセスの中で獲得してきたある側面かもしれない」という見解です。
この本に強く惹かれたのは、思考や霊性、神秘体験といったものを、今ここに存在している「私」という個体から切り離して扱っていないことでした。
人はまず有機体であり、動物です。
その有機体として生まれ、生きてきた過程の中で経験してきたこと、言葉になる前の感覚、自分でも意味がわからないまま表出せずにはいられない衝動や表現も含めて、「私」という存在が形づくられていきます。
神秘体験もまた、有機体である個としての「私」から生まれてくるものとして捉えられています。
本書の後半では、トランスパーソナルと呼ばれる霊的な神秘体験を「霊的アイデンティティ」、受胎や出産にまつわる至高体験などを「有機体的(生命的)アイデンティティ」と名づけています。そのどちらにも序列を設けることなく、「超個人的な体験」として位置づけています。
特に印象的だったのは、「超個人的な体験」という言葉でした。
それは社会や外部からの解釈や意味づけに回収されないよう、またそれらに還元することなく、自分の中で大切に保持しておく、その人自身の固有で個人的な体験という意味でした。
そして、その体験は単なる出来事として終わるのではなく、その後の生き方や自己理解に影響を与え、「私」という存在そのものの形成に関わっていきます。
この見解に触れたとき、胸が熱くなりました。
また印象的だったのは、著者自身の探究の姿勢です。
著者は、真理を解き明かした高次の立場から語ろうとはしていません。一人の人間として経験し、検証し、問い続けながら、一つの見解を示されています。
スピリチュアルを語る人の中には、「目覚めている人」と「目覚めていない人」という構図をつくり、結果として新たな二項対立を生み出してしまう場合もあります。
それは非二元を語りながらも、別の形の二元論を生み出しているように感じられます。
しかし本書からは、そのような上下関係や優劣の視点を感じませんでした。
神秘体験や霊性を扱いながらも、それを特別なものとして権威化することなく、人間という有機体への信頼を土台に語っている。
その態度に深い誠実さを感じました。
(E.Tさん)


